しかし、会社のカネの処理の原則に照らせば、そうなるのだ。 その原則を守るために、会社は、カネの支払いと受け取りに関するすべての記録を5年間保存するのである。
会社の帳簿は、それを見ることによって、会社が儲かったかどうか、わかる必要がある。 これは、実は、容易なことではない。
夏祭りや学園祭に友人5人で屋台を出すことを考えてみよう。 何の屋台でもいいのだが、仮に、喫茶店の屋台を出すとする。
その屋台が儲かったかどうか、どうすればわかるだろうか。 まず、5人が1人2万円ずつ出資する。
場所代に1万円、テントのレンタル代に2万円、コーヒー豆に1万円、お菓子類に1万円などの支出を費用として記録し、売上を収入として記録する。 食器は、家にあるものを持ち寄る。
仮に、売上が7万円であれば、残高が3万円。 儲けの2万円を5人で1人4000円ずつ山分けすればいい。
屋台がいくら儲かったかは、このように、現金の出入りを記録するだけで簡単にわかる。 しかし、会社の場合も同じだと考えたら、大間違いである。
この屋台は、利害関係を持つ人が5人しない。 しかも、その5人の立場が同じである。
一方、会社の場合は、大勢の人間が異なる立場で利害関係を持ち、取引は短い間に完結せず、原則として永遠に継続する。 屋台の例では、5人の立場が同じだから、いろいろなことを暖昧に済ませられた。
会社の場合は、それが、いちいち問題になる。 屋台の喫茶店を基準に考えれば、会社の帳簿は、簡単に済ませられることをわざわざ複雑に処理しているように見える。
しかし、それは逆である。 屋台の喫茶店の方が、細かいところに目をつぶって済ませている。

会社の帳簿は、カネの流れに関わったすべての原因を正しく記載して、完結した世界を作ろうとする。 自己満足のためにそうするのではない。
そこから、もっと儲けるための工夫を見出すためである。 会社の複雑なカネの動きを正しく把握するために、人類は長い時間をかけて工夫を重ねてきた。
企業会計は「人間の精神の生んだ最高の発明のひとつ」なのである。 株価だけでなく、経済の先行きを考えるうえで、知っておいた方がいい会社の成り立ちに関する必要がある。
たとえば、5人がまったく同じだけ働いたわけではないはずである。 会社であったら、取り分の計算がややこしくなる。
また、会社であったら、持ち寄った食器をどうしたかも、帳簿に載せ必要がある。 数日間限りの屋台の喫茶店と違って、いつの間にかそこにあったという暖昧な処理はできない。

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